ワイヤーカット加工の基礎知識と榊原工機の得意技 – 小物部品の精密加工を極める

2025年9月25日
#ブログ
有限会社榊原工機|小物部品の少量~中量生産に特化|ガレージブランド・個人ブランド”の試作開発も

小物部品の少量生産や試作開発でお困りではありませんか?

「複雑で微細な形状の部品を、ミクロン単位の精度で加工したい」 「焼入れされた硬い金属に、追加工が必要だけど、どこも難しいと言う」 「熱による歪みを避けたい精密な部品だけど、切削加工だと熱影響が心配」 「一点ものや試作品で、極めてシャープな内角や薄い壁を持つ部品を作りたい」

このような課題を抱える製品開発担当者の皆様に、解決の鍵となるのが「ワイヤーカット加工」です。

私たち榊原工機は、小物部品の精密加工において、このワイヤーカット加工を得意技として、お客様の多様で困難な要求に「ものづくりの駆け込み寺」として応え続けています。

この記事では、ワイヤーカット加工の基本的な知識から、メリット・デメリット、そして榊原工機がどのようにこの技術を活用し、お客様のアイデアを高品質で具現化しているのか、詳しくご紹介します。

ワイヤーカット加工とは?基礎知識を分かりやすく解説

ワイヤーカット加工は、現代の精密加工において欠かせない技術です。まずは、その原理と特徴を理解しましょう。

非接触の放電加工という革新的な仕組み

ワイヤーカット加工は、正式には「ワイヤー放電加工」と呼ばれ、電気を利用した非接触加工の一種です。従来の切削加工とは根本的に異なる原理で動作します。

具体的な仕組みは以下の通りです:

  1. 細いワイヤーを電極として使用 真鍮やタングステンなどの非常に細い(直径0.05mm~0.3mm程度)ワイヤーが電極となります。このワイヤーは、まるで細い糸のように巻き取られており、加工中に常に新しい部分が送り出されることで、安定した加工品質を保ちます。
  2. 微細な隙間での放電現象 ワイヤーと加工対象物(ワーク)の間に微細な隙間(放電ギャップ)を保ち、そこに電圧を印加します。この隙間は数ミクロンから数十ミクロンという極めて狭い範囲で制御されます。
  3. 火花放電による材料除去 電圧が高まると、ワイヤーとワークの間に連続的に火花放電が発生します。この放電エネルギーは瞬間的に超高温となり、ワーク表面のごく一部が溶融・気化し、微粒子となって除去されます。
  4. 加工液による冷却と清掃 加工中は、純水などの加工液が常に供給され、放電によって生じた熱を冷却する役割を果たします。同時に、溶融した微粒子や加工カスを洗い流し、ワイヤーとワーク間の安定した放電を維持します。

実際の加工現場での活用例

榊原工機では、手のひらサイズの小物部品を中心に、このワイヤーカット加工を活用しています。

例えば、スマートフォンの内部部品では、0.1mm以下の薄い壁を持つ精密なブラケットや、複雑な形状のシールド部品などがあります。これらは従来の切削加工では工具が破損しやすく、加工が困難とされていました。

しかし、ワイヤーカット加工なら、ワイヤーが直接触れることなく、放電によって精密に切断できるため、このような微細な部品も安定して製造できます。

ワイヤーカット加工の主なメリットとは

ワイヤーカット加工が多くの製造現場で重宝される理由は、従来の切削加工では得られない多くのメリットがあるからです。

驚異的な高精度を実現

ワイヤーカット加工の最大の特徴は、その高精度性にあります。

ワイヤーとワークが直接接触しないため、切削抵抗によるワークの歪みや振動が発生しません。これにより、非常に高精度な加工が可能となり、ミクロン単位の公差が要求される部品にも安定して対応できます。

実際の現場では、金型の入れ子部品や治具部品など、わずかな誤差も許されない精密部品の加工で、その真価を発揮しています。榊原工機の多能工エンジニアは、長年の経験から、ワイヤーの摩耗やワークの微細な動き、さらには切り離し時の加工物の自重による変形まで見越したプログラムを作成し、安定した高精度を実現しています。

複雑形状への対応力

細いワイヤーが電極となるため、切削工具では困難な複雑な形状や微細加工を精密に行えます。

例えば、歯車の歯形加工では、従来の切削加工では専用の歯切りカッターが必要でしたが、ワイヤーカット加工なら汎用のワイヤーで様々な歯形に対応できます。また、0.05mm程度のシャープな内角や、複雑な自由曲線を持つ輪郭形状も、プログラム通りに正確に加工可能です。

高硬度材の加工が得意

電気的な放電を利用するため、材料の硬さに加工性が左右されません。

焼入れ鋼や超硬合金など、切削加工では工具摩耗が激しく加工困難な材料でも、ワイヤーカット加工なら安定して加工できます。これは「焼入れ鋼に追加工は可能?」といった現場の悩みに対する有効な解決策となっています。

実際に榊原工機では、焼入れ後のプレス金型に精密なスリットを追加したり、高硬度の測定具に細かな目盛りを刻んだりする作業を日常的に行っています。

ワイヤーカット加工の制約と対策

優れた特徴を持つワイヤーカット加工ですが、いくつかの制約もあります。これらを理解し、適切に対処することが重要です。

導電性材料に限定される理由

電気的な放電を利用するため、加工できる材料は電気を通す導電性のもの(金属、グラファイトなど)に限られます。

一般的な絶縁性樹脂は直接加工できませんが、榊原工機では多様な設備群と多能工エンジニアの知見により、樹脂加工にも対応しています。例えば、樹脂部品はマシニングセンタで加工し、金属インサート部品をワイヤーカットで製作して組み合わせるといった、複合的なアプローチを提案します。

加工速度の課題と解決法

切削加工と比較すると、放電による材料除去は時間がかかります。

しかし、榊原工機では「考えて動く多能工エンジニア」が、効率的な工程設計で this課題を克服しています。大まかな形状はマシニングセンタで高速に切削し、その後ワイヤーカットで精密な仕上げを行うといった、ハイブリッドな加工方法を採用することで、速度と精度の両立を図っています。

貫通加工の特性を活用

ワイヤーカット加工は基本的にワークを貫通する形状の加工が主体となります。

この特性を逆手に取り、複雑な内部形状を持つ部品の製作に活用しています。例えば、あらかじめ切削加工でスタート穴を開けておくことで、内部の閉じた形状(例:複雑な冷却チャンネルを持つ金型など)を精密に加工することが可能です。

榊原工機のワイヤーカット加工における得意技

私たち榊原工機は、単にワイヤーカット機械を保有しているだけでなく、お客様の期待を超える「得意技」を提供できる理由があります。

超高精度を支える技術力

榊原工機の「クリエイティブなものづくり哲学」と「考えて動く多能工エンジニア」が、ワイヤーカット技術と融合することで、超高精度を実現しています。

私たちのエンジニアは「頭を旋盤のように高速回転させてベストな加工法を考えています」という表現通り、常に最適な解を追求しています。ワイヤーカット加工においても、この哲学が活かされます。

具体的には、ワイヤーの特性(素材、直径、送り速度)、ワークの材質(熱膨張率、導電性)、加工液の状態、そして加工順序を総合的に考慮した緻密なプログラミングと工程設計を行います。これにより、ミクロン単位の精度を安定して実現しています。

小物部品特化の強み

榊原工機は「手のひらサイズの部品を中心に、小物部品なら何でも加工OK!」を強みとしており、ワイヤーカット加工もこの得意分野で真価を発揮します。

医療機器の精密部品では、カテーテル先端の微細な切れ込みや、内視鏡部品の極薄フレームなど、人命に関わる高精度が要求される部品を多数手がけています。これらは切削工具では破損リスクが高く、従来は加工困難とされていた領域です。

小型モーター部品では、効率向上のための複雑な形状を持つローター溝や、精密なエンコーダー用スリットなどを、安定した品質で製造しています。

難削材・高硬度材への挑戦と解決

榊原工機では、難削材や高硬度材への加工において豊富な知見と経験を持っています。

焼入れ鋼の精密加工事例

焼入れされた鋼材は非常に硬く、切削加工では工具摩耗が激しく、加工熱による歪みのリスクも高まります。

ある自動車部品メーカーからの依頼で、焼入れ後のプレス金型に、製品の機能向上のための精密なスリットを追加する必要がありました。従来の切削加工では、加工熱により金型の硬度が低下するリスクがありましたが、ワイヤーカット加工により、材料の特性を損なうことなく、必要な形状を精密に追加できました。

この事例では、0.05mmという極めて狭いスリット幅を、±0.01mmの精度で加工することに成功し、お客様の製品性能向上に大きく貢献しました。

特殊合金への対応実績

チタンやインコネル、ハステロイなどの特殊合金は、高い強度や耐熱性を持つ反面、切削では工具寿命が極めて短くなる難削材です。

航空宇宙産業向けの部品製作では、チタン合金製のブラケットに複雑な軽量化穴を加工する依頼がありました。従来の切削加工では、工具費が製品価格を押し上げる要因となっていましたが、ワイヤーカット加工により、コスト効率を大幅に改善しながら、要求精度を満たす部品を製造できました。

複合加工によるシナジー効果

榊原工機では、ワイヤーカット加工を単体で運用するだけでなく、豊富な設備群と組み合わせることで、さらなる付加価値を生み出しています。

他の加工法との効果的な組み合わせ

「特急案件だから、すぐ動けるマシニングと旋盤で工程を組もう」という現場の判断力が、お客様の多様なニーズに応える原動力となっています。

例えば、複雑な三次元形状を持つ部品の製作では、まず5軸加工機で大まかな形状を削り出し、その後ワイヤーカットで精密なスリットや穴を追加するといった工程を組みます。これにより、それぞれの加工方法の長所を活かし、単一の加工方法では実現困難な部品も効率的に製造できます。

ワンストップソリューションの提供

「加工に困った。納期に困った。いろいろ相談するよりも榊原工機1社で解決できることが多い」とお客様から評価されるように、最適な加工方法を総合的に提案します。

最近の事例では、電子機器のケース部品で、外形は切削加工、内部の放熱フィンはワイヤーカット、ネジ穴は複合加工機、といった具合に、一つの部品に対して複数の加工方法を組み合わせ、最適な品質とコストを実現しました。

このようなワンストップ対応により、お客様は複数業者との調整に時間を取られることなく、製品開発に集中できる環境を提供しています。

少量・試作に特化した迅速対応力

榊原工機は「少量・試作にトコトン強い会社」として、ワイヤーカット加工においてもこの強みを発揮しています。

特急案件への柔軟な対応事例

ある電子機器メーカーから、展示会前日に試作品の修正依頼が入りました。製品のスイッチ部分に0.2mmのスリットを追加する必要があり、しかも焼入れ済みの部品への追加工でした。

通常なら数日を要する作業でしたが、ワイヤーカット加工の特性(段取りの容易さ、後工程の少なさ)を活かし、当日中に加工を完了。お客様は予定通り展示会に参加でき、新製品の発表を成功させることができました。

コスト効率改善の実現

複雑な形状を高精度に、しかも一度の段取りで加工できるワイヤーカットは、特殊工具が不要な場合も多く、小ロット生産のコスト効率を大幅に改善します。

従来、複雑形状の試作部品では、専用工具の製作費が部品価格の大部分を占めることがありました。しかし、ワイヤーカット加工なら、汎用のワイヤーで様々な形状に対応できるため、工具費を大幅に削減できます。

また、高精度な仕上がりにより、後工程のバリ取りや研磨作業も最小限に抑えられ、トータルでのコストダウンに貢献しています。

「あたたかい町工場」だからできる密な連携

私たちの工場は、お客様から「工場らしくない」「あたたかい町工場」だと評価されます。この環境が、高品質なワイヤーカット加工を支える重要な要素となっています。

お客様との密なコミュニケーション

木のぬくもりと緑にあふれた外観の工場で、1階で金属加工を行い、2階には木の温もりを感じる事務所があります。たまに人懐っこい黒猫のノア君がお出迎えすることもある、親しみやすい環境です。

このようなアットホームな雰囲気だからこそ、お客様は「こんな複雑な形状、ワイヤーカットで本当にできるかな?」「この素材で熱影響なしに加工したいんだけど…」といった技術的な悩みを気軽に相談できます。

現場の声を活かした改善提案

多能工エンジニアたちは、お客様の熱い思いや細かなニュアンスをじっくりと聞き、最適な加工方法を一緒に見つけ出します。

「もしもお急ぎの場合は、社長はお話し好きなのでメールで返信を待つより、電話して事情を説明することをお勧めします」という姿勢で、人間味あふれるコミュニケーションを通じて、製品への深い理解を共有します。

このような密な連携により、単なる加工代行ではなく、お客様の製品開発パートナーとして、より良いものづくりの提案ができるのです。

お問い合わせとご相談について

小物部品の精密加工でお困りの皆様、榊原工機のワイヤーカット加工技術が、あなたの製品開発を強力にサポートします。

試作開発に関するご相談、お見積りのご依頼、「こんな特殊な加工はできる?」といった技術的なご質問まで、どのようなことでもお気軽にお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ TEL: 0568-36-1628 受付時間: 9:00-17:00(12:00-13:00を除く) 休日: 土・日・祝日

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お急ぎの場合 メールで返信を待つよりも、直接お電話いただくことをお勧めします。状況を直接説明していただくことで、より迅速な対応が可能です。

所在地 〒486-0932 愛知県春日井市松河戸町2-5-15

榊原工機は、お客様の「ものづくり」の夢を現実にするため、技術と知恵を総動員し、全力でサポートいたします。ワイヤーカット加工が持つ無限の可能性を、ぜひあなたの製品開発にご活用ください。